「いつかは自分のクリニックを持ちたい」と考えている医師は多いですよね。でも、ゼロからの新規開業はハードルが高い…。そんなときに選択肢として注目されているのが承継開業(事業承継)です。
承継開業とは、すでに営業しているクリニックを前院長から引き継ぐ形で開業する方法のこと。初期費用を抑えられるうえに、既存の患者さんも引き継げるため、開業直後から安定した経営が見込めるのが大きな魅力です。
この記事では、承継開業のメリット・デメリットから費用の相場、新規開業との比較まで、開業を検討中の医師が知っておくべき情報をまとめました。

🦁 ナビ助のおすすめ!
医師転職ドットコム
医師専門の転職支援サービス。非公開求人多数・専任コンサルタントが条件交渉までサポート。年収アップ・働き方改善を目指す先生方に。
医師転職ドットコムの公式サイトはこちら承継開業とは?基本的な仕組みを解説
承継開業とは、引退を検討している院長からクリニックの経営権を譲り受けて開業する方法です。個人クリニックの場合は資産や患者を引き継ぐ形になり、医療法人の場合は法人そのものの経営権を取得します。
承継には大きく分けて親族承継と第三者承継の2パターンがあります。親族承継は文字通り親から子へ引き継ぐケースで、第三者承継は血縁関係のない医師が買い手となるケースです。
近年は後継者不足に悩むクリニックが増えており、第三者承継の案件数は増加傾向にあります。リクルートの「ヒキツグ」など、クリニック承継専門のマッチングサービスも登場しています。
案件を見る前に、開業という営みそのものの全体像を押さえておくと判断が速くなります。クリニック開業の実務書は、承継を選ぶ場合でも共通して使える部分が多い一冊です。
承継開業の5つのメリット
初期費用を大幅に抑えられる
新規開業では土地の取得・建物の建築・内装工事・医療機器の購入など、多額の初期投資が必要です。一般的なクリニックの新規開業で5,000万〜1億円程度かかると言われています。
一方、承継開業では既存の建物・設備をそのまま使えるため、初期費用を新規開業の半分以下に抑えられるケースも珍しくありません。特に医療機器の購入費が不要になるのは大きなアドバンテージです。
開業初日から患者が来る
新規開業で最も不安なのは「患者さんが来るかどうか」という点です。承継開業なら前院長が築いた患者基盤をそのまま引き継げるため、開業初月から安定した診療報酬が見込めます。
スタッフの確保が不要
看護師や医療事務の採用に苦労するクリニックは多いですが、承継であれば既存スタッフをそのまま引き継げます。業務フローも確立されているため、オペレーションの立ち上げがスムーズです。
地域での認知度がある
長年営業してきたクリニックには地域での知名度があります。「あそこに病院がある」と認知されている状態で引き継げるため、広告宣伝費も抑えられます。
金融機関からの融資を受けやすい
過去の診療実績や収益データがあるため、事業計画の根拠を示しやすく、金融機関からの融資審査も通りやすい傾向にあります。
承継開業は「すでに回っている事業」を引き継ぐため、経営リスクが比較的低いのが特徴です。特に開業経験のない勤務医にとっては、ゼロからのスタートよりも安心感があります。
承継開業のデメリット・注意点
設備の老朽化リスク
建物や医療機器が古い場合、承継後に多額のリフォーム費用や買い替え費用が発生することがあります。承継前に設備の状態を専門家と一緒にチェックすることが重要です。
スタッフとの関係構築
長年前院長のもとで働いてきたスタッフは、新しい院長の方針に馴染めないことがあります。最悪のケースではスタッフの一斉離職が起きることも。承継前にスタッフとの面談を行い、信頼関係を築く努力が必要です。
前院長との診療方針の違い
患者さんは前院長の診療スタイルに慣れています。急に方針を変えると患者離れにつながるリスクがあるため、段階的に自分の色を出していく工夫が求められます。
のれん代(営業権)の負担
承継の際には、目に見える資産(土地・建物・機器)に加えて、営業権(のれん代)の支払いが発生します。のれん代は一般的に年間利益の1〜3年分が相場とされています。

承継開業にかかる費用の相場
承継開業の費用は、クリニックの規模や立地、診療科目によって大きく異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
| 費用項目 | 相場 |
|---|---|
| 時価純資産(土地・建物・機器等) | 1,000万〜5,000万円 |
| 営業権(のれん代) | 実質利益の1〜3年分(1,000万〜5,000万円程度) |
| 仲介手数料 | 譲渡価格の3〜5%程度 |
| リフォーム・修繕費 | 数百万〜2,000万円 |
| 各種届出・手続き費用 | 50万〜200万円 |
合計すると3,000万〜8,000万円程度が目安です。新規開業の5,000万〜1億円と比べると、コストメリットがあることがわかります。ただし、大幅なリフォームが必要な場合は新規開業と同程度になることもあるため、現地確認は必須です。
この規模の投資を判断するには、譲渡価格の妥当性を自分の言葉で説明できる状態にしておきたいところです。医療機関の収益構造を扱った本は、のれん代の考え方を理解する下地になります。
🦁 ナビ助のおすすめ!
医師転職ドットコム
医師専門の転職支援サービス。非公開求人多数・専任コンサルタントが条件交渉までサポート。年収アップ・働き方改善を目指す先生方に。
医師転職ドットコムの公式サイトはこちら新規開業と承継開業の比較
| 比較項目 | 新規開業 | 承継開業 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 5,000万〜1億円 | 3,000万〜8,000万円 |
| 開業までの期間 | 1〜2年 | 半年〜1年 |
| 患者の確保 | ゼロからスタート | 既存患者を引き継ぎ |
| 立地の自由度 | 自由に選べる | 既存の場所に限定 |
| 内装・設備の自由度 | 自分好みにできる | 既存設備がベース |
| スタッフ | 一から採用 | 既存スタッフを引き継ぎ |
| 経営リスク | 高い | 比較的低い |
承継開業を成功させるためのポイント
信頼できる仲介サービスを活用する
承継案件は非公開で進むことが多いため、承継開業の専門仲介サービスを活用するのが効率的です。メディカルプラスやエムステージなど、医院承継専門の仲介会社を複数検討しましょう。
デューデリジェンスを徹底する
財務状況、患者動向、設備の状態、スタッフの意向、地域の競合状況など、多角的な調査が不可欠です。顧問税理士や弁護士と連携して進めることが重要です。
前院長との引き継ぎ期間を設ける
理想的には、前院長と一定期間(3〜6ヶ月程度)並行して診療を行い、患者さんやスタッフに新院長として認知してもらう期間を設けましょう。
この時期は地域の医師会や連携先への挨拶回りも重なります。院長として名刺を渡す機会が一気に増えるので、きちんとした名刺入れを1つ用意しておくと落ち着いて臨めます。

Q&Aコーナー
Q. 承継開業は何歳くらいがベストですか?
一般的には40代〜50代前半が多いですが、年齢制限はありません。30代で承継する医師もいます。重要なのは、臨床経験と経営への意欲があるかどうかです。
Q. 承継後に診療科目を変更することはできますか?
法的には可能ですが、既存患者の離脱につながるリスクがあります。同じ診療科での承継が基本で、科目を変更する場合は新規開業に近い集患努力が必要になります。
Q. 承継開業の案件はどうやって見つけますか?
承継専門の仲介会社(エムステージ、メディカルプラスなど)に登録するのが一般的です。また、医師会を通じた紹介や、各種クリニック承継のポータルサイトも活用できます。
承継開業の流れ|具体的なステップを解説
承継開業を検討してから実際に開業するまでの流れを、時系列で整理しておきましょう。全体のスケジュール感を把握しておくと、計画的に準備を進められます。
ステップ1:承継案件の情報収集(6ヶ月〜1年前)
まずは承継案件の情報収集から始めます。専門の仲介会社への登録、医師会からの情報収集、知人・先輩ドクターからの紹介など、複数のチャネルを活用しましょう。自分が開業したい地域、診療科、規模感をある程度絞っておくと、効率よく案件を探せます。
ステップ2:候補案件の見学・面談(3〜6ヶ月前)
気になる案件が見つかったら、実際にクリニックを見学し、前院長との面談を行います。診療の雰囲気、設備の状態、スタッフの様子など、書面だけではわからない情報を自分の目で確認することが重要です。可能であれば複数回訪問し、平日と土曜日で患者の来院状況がどう違うかも確認しておくとよいでしょう。
ステップ3:デューデリジェンス(2〜3ヶ月前)
譲渡に向けた詳細な調査(デューデリジェンス)を実施します。財務データの精査、患者数の推移分析、設備の減価償却状況、スタッフの雇用条件、テナント契約の内容など、専門家(税理士・弁護士・コンサルタント)の力を借りて徹底的に調べます。ここを手抜きすると、承継後に問題が発覚する事態に陥りかねません。
ステップ4:条件交渉・契約締結
デューデリジェンスの結果を踏まえて、譲渡条件の交渉に入ります。のれん代の金額、設備の扱い、スタッフの処遇、前院長の非競業義務(承継後に近隣で開業しないことの取り決め)など、細かい条件を詰めていきます。条件が合意に至ったら、正式な契約を締結します。
ステップ5:引き継ぎ・開業届出
契約締結後は、前院長との並行診療期間を設けて、患者やスタッフとの関係構築を進めます。同時に、保健所への開設届、地方厚生局への保険医療機関の届出、各種許認可の手続きを行います。
個人クリニックの承継では、保険医療機関コードが変わるため、患者への周知が必要です。医療法人の場合は、法人の理事長変更で対応でき、保険医療機関コードは継続できるケースが多いです。
承継を成功させた医師の共通点
承継開業を成功させた医師に共通するのは、以下のような姿勢です。
まず、前院長との良好な関係を築けていること。承継は単なる売買取引ではなく、医療の継続が根底にあります。前院長が安心して任せられると感じてもらえるかどうかが、スムーズな引き継ぎの鍵です。
次に、スタッフへの敬意を忘れないこと。長年働いてきたスタッフは、クリニックの財産です。新院長が上から目線で臨むと、スタッフの不満が溜まり、最悪の場合は集団退職につながります。
そして、急激な変革を避けること。自分の理想の診療スタイルがあるとしても、まずは前院長のやり方を踏襲し、患者さんとスタッフの信頼を得てから、段階的に自分の色を出していくのが成功パターンです。承継後の最初の半年は守りの期間と割り切りましょう。
まとめ
承継開業は、新規開業と比べて初期費用を抑えながら、開業初日から安定した経営が期待できる優れた選択肢です。ただし、設備の老朽化やスタッフとの関係構築など、承継ならではのリスクも存在します。
成功のカギは、事前の徹底的な調査と、前院長からの丁寧な引き継ぎです。開業を検討している医師は、新規開業と承継開業の両方を視野に入れて、自分に合った方法を選んでいきましょう。

🦁 ナビ助のおすすめ!
医師転職ドットコム
医師専門の転職支援サービス。非公開求人多数・専任コンサルタントが条件交渉までサポート。年収アップ・働き方改善を目指す先生方に。
医師転職ドットコムの公式サイトはこちら


