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医師は高所得者の代表格ですが、相続税の負担も重くなりがちです。特に開業医の場合、相続税の対象となる財産が想像以上に多いのが特徴です。「うちはそこまで資産がないから大丈夫」と思っていても、医療法人の出資持分や未収の診療報酬まで加わると、びっくりするような評価額になることがあります。
この記事では、医師が知っておくべき相続対策の基本と、資産を守るための具体的な方法を解説します。

医師の相続で特に気をつけるべきポイント
資産が多いほど相続税率は上がる
相続税は累進課税で、最高税率は55%にもなります。医師は一般的に高所得のため、預貯金・有価証券・不動産などの個人資産だけでも課税対象が膨らみやすい傾向にあります。
開業医の場合、医業関連資産も課税対象
開業医の相続では、個人資産に加えて以下のようなものも評価対象になります。
- 医院の建物・土地
- 医療機器・備品
- 医薬品の在庫
- 未収の診療報酬
- 事業用の預貯金
未収の診療報酬も立派な財産として評価されるため、「まさかこんなものまで」と驚く先生も少なくありません。
医療法人の出資持分の評価
出資持分の評価額が相続税に大きく影響します。クリニックの業績が良ければ良いほど出資持分の評価額は上がり、結果として相続税が重くなるという皮肉な構造です。
特に「持分あり医療法人」の場合、出資持分が高額に評価されるケースがあり、相続発生時に納税資金が足りず、最悪の場合は医院の閉院に追い込まれる事例も報告されています。
この構造は税理士に相談する前に自分でも把握しておきたいところです。医療法人特有の論点をまとめた書籍が出ているので、相談前の下地づくりに使う先生もいます。

勤務医でも相続対策は必要なのか
「開業医の話でしょ?うちは勤務医だから関係ない」と思う先生もいるかもしれませんが、それは危険な思い込みです。
勤務医でも、高収入が長年続くと預貯金や有価証券が積み上がり、基礎控除額を超えるケースは珍しくありません。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。配偶者と子ども2人の場合は4,800万円。年収1,500万円以上の勤務医なら、退職金も含めるとこのラインを超える可能性は十分にあります。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数。この金額を超える財産がある場合、相続税が発生します。勤務医であっても、早めに自分の資産総額を把握しておくことが大切です。
医師が今からできる相続対策5選
1. 生前贈与を計画的に行う
年間110万円までの贈与は非課税です。時間をかけて相続財産を減らしていくのが基本戦略です。たとえば、子ども2人に毎年110万円ずつ贈与すれば、10年間で2,200万円の財産を非課税で移転できます。
ただし、相続開始前7年以内の贈与は「生前贈与加算」の対象となり、相続財産に持ち戻される点には注意が必要です(税制改正により、以前の3年から7年に延長されました)。
このあたりは制度改正が続いている領域でもあります。改正内容を反映した解説書で全体像を押さえたうえで税理士に相談すると、打ち合わせの精度が上がります。
2. 生命保険の非課税枠を活用する
「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。たとえば相続人が3人なら1,500万円まで非課税です。死亡保険金は受取人が指定でき、遺産分割協議の対象外となるため、納税資金の確保にも使える便利な手段です。
3. 出資持分の評価を下げる対策
- 役員報酬の適正化
- 役員退職金の計画的な支給
- 設備投資や修繕の前倒し
- 持分なし医療法人への移行
特に「持分なし医療法人」への移行は、出資持分そのものをなくすことで相続税の課題を根本的に解決する方法です。認定医療法人制度を利用すれば、持分放棄時の税負担が猶予・免除される特例措置も設けられています。
4. プライベートカンパニーの活用
資産管理会社を設立して資産を法人名義で管理する方法があります。個人の所得税率(最高45%+住民税10%)に対し、法人税率は約23%程度のため、税率差を活用した節税が可能です。不動産や有価証券の管理を法人で行うことで、相続財産を効率よく移転できます。
5. 不動産を活用した評価額の圧縮
不動産に変えることで相続税評価額を圧縮できます。現金で持っていると100%が課税対象ですが、不動産に変えると路線価や固定資産税評価額で評価されるため、実勢価格の70〜80%程度まで評価額が下がります。さらに賃貸物件にすれば、貸家建付地の評価減も適用されます。

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医師転職ドットコムの公式サイトはこちら事業承継と相続は一体で考える
開業医にとって、相続対策は事業承継と切り離せません。子どもが後継者になる場合も、第三者に承継する場合も、「誰に・何を・いつ渡すか」を明確にしておく必要があります。
後継者がいる場合
個人版事業承継税制を活用すれば、医院の事業用資産にかかる相続税の全額が猶予され、後継者の死亡等により最終的に免除される制度もあります。早めに後継者を指名し、段階的に経営を引き継いでいく計画を立てることが大切です。
後継者がいない場合
M&A(第三者への譲渡)による事業承継も選択肢です。クリニックの価値を適正に評価してもらうためにも、日頃から財務状況を整理し、経営を見える化しておくことが重要です。
相続対策を始めるべきタイミング
相続対策は元気なうちに始めるのが鉄則です。遅くとも50代のうちには専門家と一緒に対策を開始しましょう。認知症になってしまうと、生前贈与や不動産の売買、遺言書の作成などができなくなります。
「まだ早い」と思っているうちが、実は始め時です。生前贈与は時間をかけるほど効果が大きくなるため、40代からの着手でも決して早すぎません。
最初の一歩としては、資産の一覧と家族への意向を書き出しておくだけでも効果があります。専門家との面談でも、手元に整理された情報があるかどうかで話の進み方が変わります。
具体的な対策を実行する際は、必ず相続に詳しい税理士や弁護士に相談してください。特に医療法人の出資持分に関わる対策は、専門性が高いため、医療経営に精通した税理士を選ぶことが重要です。
相続対策のチェックリスト
今すぐ確認できる項目をまとめました。当てはまるものが多いほど、早めの対策が必要です。
- 個人の金融資産(預貯金・有価証券)が5,000万円以上ある
- 不動産(自宅・投資用)を所有している
- 医療法人の出資持分を保有している
- 生命保険の非課税枠を活用していない
- 遺言書を作成していない
- 相続について家族と話し合ったことがない
- 顧問税理士に相続の相談をしたことがない
3つ以上当てはまる場合は、まず税理士への無料相談から始めるのが第一歩です。
あわせて、遺言書・保険証券・不動産の権利証といった書類の保管場所も見直しておきたいところです。散らばったままだと、いざというときに家族が探し出せません。
よくある質問(Q&A)
Q. 勤務医でも相続対策は必要?
はい。基礎控除を超える財産がある場合は相続税が発生する可能性があります。勤務医でも退職金や預貯金、有価証券を含めると基礎控除額を超えるケースは珍しくありません。
Q. 遺言書は作っておいたほうがいい?
特に事業承継を考えている場合は、遺言書の作成を強くおすすめします。遺産分割のトラブルを防ぐだけでなく、配偶者控除や小規模宅地等の特例を適切に活用するためにも有効です。
Q. 持分なし医療法人への移行はいつまでにやるべき?
認定医療法人制度の期限が設けられているため、移行を検討している先生は早めに税理士に相談してください。制度が延長されることもありますが、期限ギリギリの駆け込みは避けたいところです。
Q. 相続税の納税資金が足りない場合はどうなる?
延納(分割払い)や物納(不動産等で納める)という制度がありますが、条件が厳しく、手続きも複雑です。納税資金は生命保険や預貯金であらかじめ確保しておくのが安心です。
Q. 医療法人の相続で特に多いトラブルは?
最も多いのは、出資持分の評価額が想定よりも大幅に高く、納税資金が確保できないケースです。クリニックの内部留保が積み上がっていると、出資持分の評価が数億円規模に膨らむこともあります。もう一つよくあるのが、後継者以外の相続人との遺産分割で揉めるパターンです。医療法人の出資持分は換金しにくい資産であるため、他の相続人への代償分割資金の確保も事前に検討しておく必要があります。
まとめ|資産を「築く」だけでなく「守る」意識を持とう
複数の方法を組み合わせて計画的に対策を進めることが重要です。生前贈与、生命保険、出資持分の引き下げ、プライベートカンパニー、不動産活用――どれも単体ではなく、組み合わせることで効果が最大化します。
相続対策は「知っているかどうか」で結果が大きく変わる分野です。せっかく築いた資産を次の世代にしっかり引き継ぐために、今から動き出しましょう。
参考:税理士法人チェスター|開業医のための相続対策|メディコム|開業医の遺産相続税|MedicalLIVES|医師の相続税対策
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