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「臨床の現場にいるだけでは解決できない課題がある」「自分のアイデアで医療を変えたい」――そんな思いを持つ医師が、起業やスタートアップの世界に飛び込むケースが増えています。
近年、医療AIやデジタルヘルス、医師向けプラットフォームなど、医師起業家が手がけるスタートアップが次々と生まれています。臨床現場で感じた課題をテクノロジーで解決するビジネスモデルが多く、医師だからこそ見える「ペインポイント」が起業の出発点になっています。
「起業に興味はあるけど何から始めればいいの?」「臨床を続けながらでもできる?」「失敗したらどうなる?」――この記事では、そんな疑問に答えるべく、医師が起業する方法、代表的な成功事例、具体的なステップ、資金調達、必要な準備、そして知っておくべきリスクについて詳しく解説します。

「開業」と「起業」は何が違うのか
クリニック開業は「起業」とは別物
医師がビジネスを始めると聞くと、まずクリニックの開業を思い浮かべるかもしれません。しかし、ここでいう「起業」はクリニック開業とは異なります。
- 開業:自分で医療機関を開設し、臨床医として患者を診療するビジネス
- 起業:新しいサービスや製品を生み出して社会に提供するビジネス
医師のスタートアップは、医療AI、デジタルヘルス、医師向けプラットフォーム、医療機器の開発など多岐にわたります。臨床現場の「これがあったらいいのに」を形にするのが、医師起業の核心です。
医師起業の成功事例
医療AIの分野
AIを活用した医療機器を開発するスタートアップでは、医師出身の創業者が目立ちます。たとえば、インフルエンザ等の感染症をAIで迅速に診断するシステムや、脳ドック画像をAIで解析して認知症リスクを評価するソフトウェアなど、臨床現場の課題を直接解決するサービスが次々と生まれています。
デジタルヘルス・治療用アプリ
ニコチン依存症の治療用アプリのように、薬やデバイスではなくソフトウェアで治療を行う「デジタルセラピューティクス(DTx)」も医師起業家が牽引する領域です。
医師向けプラットフォーム
医師が実名で登録し、オンラインで医師同士が質問・回答を交換できるサービスなど、医療従事者の情報共有を効率化するプラットフォームも医師起業から生まれています。

医師が起業するメリット
医療の課題を根本から解決できる
臨床医として目の前の患者を治療するのも重要ですが、起業すれば医療システムそのものを改善するスケールの大きな貢献が可能になります。一人の患者ではなく、何万人もの患者に影響を与えるプロダクトを生み出せる可能性があります。
収入の上限がない
臨床医の年収には一定の天井がありますが、起業家の収入には理論上の上限がありません。事業が成功し、IPO(株式公開)やM&A(買収)に至れば、臨床では到達し得ない資産を手にすることもあります。
自由度の高い働き方
自分が経営者になるため、働き方の自由度は圧倒的に高くなります。臨床を続けながら週に数日を起業に充てる「パラレルキャリア」も可能です。
医師免許というセーフティネット
起業が失敗しても、医師免許があれば臨床に戻れるという安心感は、他の起業家にはない大きなアドバンテージです。この「保険」があるからこそ、思い切ったチャレンジができます。
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医師転職ドットコムの公式サイトはこちら医師が起業するデメリット・リスク
ビジネス経験の不足
多くの医師は経営やマーケティング、資金調達などのビジネススキルを学ぶ機会がなく、起業の初期段階で壁にぶつかるケースが少なくありません。ビジネスパートナーの確保やメンターの存在が重要になります。
収入の不安定さ
起業初期は売上がゼロの期間が続くことも覚悟が必要です。生活費の確保のために、非常勤の臨床を続けながら起業するのが現実的な選択肢です。
臨床スキルの低下
起業に注力するほど臨床から離れる時間が増え、医師としてのスキルが低下するリスクがあります。
起業は華やかなイメージがありますが、スタートアップの生存率は高くありません。十分な資金計画と事業計画を立てた上で、リスクを管理しながら進めることが不可欠です。
医師が起業するための具体的なステップ
ステップ1:課題を見つける
起業の出発点は「解決したい課題」です。臨床現場で感じている不便さや非効率さを書き出してみましょう。「これがあったらいいのに」が最高のビジネスアイデアになります。
ステップ2:ビジネスモデルを設計する
課題に対する解決策を考え、誰に・何を・どうやって提供するかをまとめます。最初から完璧なプランは不要です。仮説を立て、小さく検証する「リーンスタートアップ」の考え方が重要です。
ステップ3:チームを組む
医師一人で起業するのは困難です。エンジニア、デザイナー、ビジネス開発の専門家など、足りないスキルを補えるメンバーを見つけましょう。起業家向けのコミュニティやアクセラレータープログラムへの参加が有効です。
ステップ4:資金を調達する
スタートアップの資金調達には、以下のような方法があります。
- 自己資金(ブートストラップ)
- ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
- エンジェル投資家からの出資
- 助成金・補助金(NEDO、AMED等)
- アクセラレータープログラムへの採択
ステップ5:MVP(最小限の製品)を作る
完璧な製品を作ってから市場に出すのではなく、必要最小限の機能を持つプロダクト(MVP)を素早く作り、ユーザーからフィードバックを得て改善を繰り返します。
ステップ6:法規制を確認する
医療分野の起業では、薬機法(旧薬事法)、医療法、個人情報保護法などの規制への対応が不可欠です。特に医療機器やアプリの分野では、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への申請が必要になるケースもあります。

医師起業の年収・収入事情
スタートアップの収入は不安定
起業した場合の収入は、事業の成長段階によって大きく異なります。一般的な医師起業家の収入推移は以下の通りです。
- 創業期(0〜2年目):役員報酬ゼロ〜数百万円。多くの医師は非常勤の臨床で生活費を確保
- 成長期(3〜5年目):事業が軌道に乗れば年収1,000万〜2,000万円。ただし会社の成長を優先して低報酬を維持する起業家も多い
- 成熟期・EXIT:IPOやM&Aに至れば数千万〜数億円の株式報酬を得る可能性がある
臨床医としての安定した年収と比較するとリスクは高いですが、成功した場合のリターンは臨床では到達し得ないレベルに達する可能性があります。
「稼ぎながら起業する」モデル
最もリスクの低い起業モデルは、非常勤の臨床で年収1,000万円程度を確保しながら、残りの時間を起業に充てる方法です。医師のアルバイトは時給1万円前後と高水準のため、週2〜3日の非常勤でも十分な収入を得ながらチャレンジできるのは医師起業家の大きなアドバンテージです。
医師起業で気をつけるべき法規制
医療関連の規制
医療分野での起業には、一般的なスタートアップ以上に厳しい規制があります。特に以下の法規制には注意が必要です。
- 薬機法:医療機器やアプリが「医療機器」に該当する場合、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への申請が必要。承認取得に数年かかることもある。
- 医療法:医療行為を伴うサービスの場合、開設届や管理者の要件を満たす必要がある。
- 個人情報保護法:患者データを扱う場合、要配慮個人情報として厳格な管理が求められる。
- 医師法:医師以外が医療行為を行うことの禁止。AIによる診断支援サービス等では「医行為」に該当するかの判断が重要。
法規制への対応を誤ると事業そのものが成り立たなくなるため、弁護士や薬事コンサルタントとの連携は初期段階から必須です。
起業に役立つリソースとコミュニティ
書籍・学習リソース
加藤浩晃著『医療×起業:医師・医療者のためのスタートアップ起業ガイド』(メディカ出版)は、医師起業の基礎を学ぶのに適した一冊です。また、ビジネスの基礎知識はMBA系の書籍やオンラインコースで補えます。
アクセラレーター・支援プログラム
Beyond Next VenturesやINDEE Japanなど、医療・ヘルスケア領域に特化したアクセラレーターがあります。資金提供だけでなく、メンタリングやネットワーキングの機会も得られるため、起業初期の医師にとって心強い存在です。
医師起業家コミュニティ
医師起業家のネットワークは年々拡大しており、先輩起業家からのアドバイスや協業の機会を得やすくなっています。学会やイベントに参加して人脈を広げることも重要です。
Q&A|医師の起業でよくある質問
Q. 臨床を続けながら起業できますか?
可能です。多くの医師起業家は、非常勤の臨床を続けながら起業しています。収入の安定確保とスキル維持の観点からも、パラレルキャリアは合理的な選択です。
Q. MBAは必要ですか?
必須ではありませんが、ビジネスの体系的な知識を学ぶには有効です。ただし、MBAを取得してから起業するよりも、起業しながら必要な知識を都度学ぶ方が効率的だという意見もあります。
Q. 起業に失敗したら臨床に戻れますか?
医師免許がある限り、臨床に戻ることは可能です。ただし、臨床から離れていた期間が長いほど復帰のハードルは上がります。
Q. 起業の資金はどのくらい必要ですか?
事業内容によって大きく異なりますが、ソフトウェア系のスタートアップなら数百万円から始められるケースもあります。ハードウェアや医療機器の開発は数千万〜数億円が必要になることもあります。
Q. 起業する医師の専門科に偏りはありますか?
特定の診療科に偏る傾向はなく、内科、眼科、精神科、放射線科など多様な診療科出身の医師が起業しています。重要なのは診療科よりも、「解決したい課題」を持っているかどうかです。
Q. チームメンバーはどうやって見つけますか?
アクセラレータープログラムや起業家向けイベント、大学のビジネススクールなどで出会うケースが多いです。最近ではLinkedInやWantedlyなどのプラットフォームを活用してCTOやCOO候補を探す医師起業家も増えています。
まとめ|医師の起業は「第三の選択肢」
「臨床」と「開業」に加えて、「起業」という第三の選択肢を持つ医師が増えています。臨床現場で感じた課題をテクノロジーで解決し、より多くの患者に貢献できるスケール感は、起業ならではの魅力です。
医師免許というセーフティネットがあるからこそ、リスクを取ったチャレンジが可能です。「いつか起業してみたい」と思っている方は、まず小さな一歩――課題の整理やコミュニティへの参加――から始めてみてはいかがでしょうか。
参考リンク:Beyond Next Ventures|医師起業家の変遷、未来コトハジメ|増える医師の起業、日経メディカル|医療スタートアップの現在地

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