「当直がつらすぎる」「当直明けの外来がしんどい」「もうこの生活を続ける自信がない」。こんな思いを抱えている先生は少なくないはずです。医師の当直は体力的にも精神的にも大きな負担になりますが、当直を減らす方法は実はいくつもあります。交渉で回数を減らすのか、環境そのものを変えるのか。この記事では、当直を減らしたい先生のために、現実的な選択肢を具体的に解説します。

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連続勤務の常態化
当直の最大の問題は、日勤→当直→翌日の日勤という30時間以上の連続勤務が珍しくないことです。2024年4月から医師の働き方改革がスタートし、連続勤務時間は28時間までという制限が設けられました。しかし現場レベルでは「宿日直許可」を取得して実質的に当直を勤務時間外として扱う病院もあり、制度と実態の乖離が指摘されています。
当直明けの通常勤務
夜間に何度もコールされ、ほとんど眠れなかった翌日にそのまま外来や手術に入る。この状況は医師の心身に深刻なダメージを与えます。一部の病院では当直翌日の勤務免除(ポスト・オンコール・デイオフ)を導入していますが、まだ少数派です。当直明けに通常通り勤務させる病院は、医療安全上も大きなリスクを抱えていると言えます。
家族との時間が奪われる
月に4〜8回の当直があると、平日の夜はもちろん土日も不定期に病院に拘束されます。子どもの行事に参加できない、家族との食事の時間が取れないなど、プライベートへの影響は計り知れません。育児中の先生にとっては特に深刻な問題です。
体力の限界と医療ミスのリスク
海外の研究でも、24時間以上の連続勤務をした医師は、そうでない医師と比べて重大な医療ミスの発生率が高いという報告があります。患者の安全を守るためにも、当直の負担軽減は医師個人の問題ではなく、医療システム全体の課題です。
今の職場で当直を減らすための交渉術
交渉のタイミングを見極める
当直回数の交渉は、年度の変わり目やシフト組みの時期に行うのが効果的です。急に「来月から当直を減らしてほしい」と言っても対応が難しいため、少なくとも2〜3か月前に相談するのが理想的です。人事異動の時期(4月・10月)の前がベストタイミングと言えます。
Give & Takeの提案をする
「当直を減らしてほしい」と要望だけ伝えても、病院側には受け入れにくい場合があります。重要なのはバーター(交換条件)の提示です。例えば、以下のような交渉パターンが考えられます。
- 「当直を月4回→2回に減らす代わりに、日勤の外来枠を週1コマ増やす」
- 「当直を減らす代わりに、後輩の指導や研修プログラムの整備を担当する」
- 「夜間の当直をなくす代わりに、日直(休日日勤帯)は引き受ける」
- 「オンコール対応に切り替えて、呼ばれた時だけ出勤する形にしたい」
病院の利益につながる提案をセットにすることで、交渉の成功率は格段に上がります。
働き方改革を味方につける
2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されています。自分の時間外労働時間が年間960時間(A水準)を超えている、または超えそうな場合は、法令遵守の観点から当直削減を求める根拠になります。厚生労働省も「医師の健康確保措置」として連続勤務時間制限やインターバル規制を定めており、これらを引用して交渉することで説得力が増します。
自分の勤務データを記録しておく
交渉を成功させるカギは「データ」です。以下の情報を最低3か月分は記録しておきましょう。
- 月間の当直回数と各当直でのコール回数
- 当直中の実際の睡眠時間
- 当直明けに通常勤務をした日数
- 月間の総労働時間(時間外労働時間を含む)
- 当直手当の金額と年収全体に占める割合
感情的にならず、数字で示すことで交渉の説得力は格段にアップします。

転職で当直をなくす・減らす方法
当直なし求人を探す
医師専門の転職エージェントに「当直なし」を条件に伝えれば、該当する求人を紹介してもらえます。当直なしの求人は意外と多く、外来専門クリニック、健診センター、訪問診療、療養型病院、産業医ポジションなどが主な選択肢です。「当直なし」を条件に求人を探すだけでも、選択肢の広さに驚く先生は多いです。
当直回数が少ない病院を選ぶ
完全に当直をゼロにしなくても、月1〜2回程度まで減らせれば大幅に負担は軽減されます。医師数にゆとりがある中〜大規模病院や、当直翌日の勤務免除制度がある病院を選ぶのがポイントです。面接時に「当直明けの勤務体制」を具体的に確認しておくと安心です。
寝当直の案件を選ぶ
コール対応がほとんどない「寝当直」のポジションを選ぶのも一つの手です。療養型病院や介護施設の当直は、急変対応の頻度が低いため、実質的に施設内で睡眠を取れるケースが多いです。ただし、完全に呼ばれないことを保証するものではない点は理解しておきましょう。
夜勤制(交代制)を導入している病院を探す
従来の「当直」ではなく、「夜勤制」を導入する病院も増えてきています。夜勤制では勤務時間が明確に区切られるため、日勤→当直→翌日日勤という連続勤務がなくなります。タスクシフト・タスクシェアの推進と合わせて、医師の夜間業務を見直す動きは全国的に広がっています。
当直を減らしても年収を維持するコツ
基本給が高い病院を選ぶ
当直手当に依存した年収構成だと、当直を減らした瞬間に年収が大幅ダウンします。基本給(固定給)が高い病院を選ぶことで、当直なしでも一定の年収水準を確保できます。転職時には年収の内訳(基本給・手当・賞与の割合)を必ず確認しましょう。
専門性を活かした交渉
特定の専門分野で高いスキルを持っている場合、その希少性を武器に年収交渉ができます。「当直はやらないが、この専門領域の外来患者を集められる」という形でGive & Takeを示せると強いです。
非常勤バイトで補填する
常勤の当直を減らして年収が下がった分を、自分の都合のよいタイミングでの非常勤バイト(外来・健診など日勤帯)で補うという方法もあります。当直で拘束されるより、日勤帯のバイトのほうが体力的に圧倒的に楽です。週1の外来バイトで日給8万〜10万円が相場なので、月に32万〜40万円程度の補填が可能です。
年収の内訳を見直す
当直手当は1回あたり3万〜8万円程度が一般的です。月4回の当直で12万〜32万円、年間では144万〜384万円を当直手当として受け取っている計算になります。この金額を把握したうえで、同額を基本給のアップやバイトで代替できるかをシミュレーションしておくと、転職や交渉がスムーズに進みます。

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30代:キャリアと健康のバランスを考える
30代は専門性を磨く重要な時期ですが、無理をして体を壊しては本末転倒です。専門医取得に必要な症例が確保できる範囲で当直回数を交渉するのが現実的です。「研修のため」に当直を続ける必要があるかどうか、冷静に判断しましょう。
40代:経験を武器に条件交渉
40代になると管理職ポジションや専門外来の立ち上げなど、当直免除の条件交渉がしやすくなります。スキルと経験を持っている先生ほど交渉力は強いので、遠慮せずに希望を伝えましょう。管理職として「部下の当直体制を整備する」という役割を引き受けることで、自身の当直免除を実現するパターンもあります。
50代以上:体力に正直になる
年齢とともに夜間の回復力は低下します。50代以上で当直を続けるのは体力的にもリスクが高いため、当直なしの職場への転職や非常勤への切り替えを積極的に検討すべきです。健診センターや産業医、訪問診療など、当直なしで安定した収入を得られるポジションは数多くあります。
| 年代 | 優先すべきこと | おすすめの選択肢 |
|---|---|---|
| 30代 | 専門医取得と健康の両立 | 当直回数の交渉・寝当直への切り替え |
| 40代 | 経験を武器にした条件交渉 | 管理職への移行・専門外来の立ち上げ |
| 50代〜 | 持続可能な働き方への転換 | 当直なし転職・産業医・訪問診療 |
当直削減に使える制度・法律
医師の時間外労働の上限規制
2024年4月施行の改正医療法により、医師の時間外労働には以下の上限が設けられています。
- A水準(一般):年間960時間以下・月100時間未満
- B水準(救急等):年間1,860時間以下(暫定特例)
- C水準(研修等):年間1,860時間以下(暫定特例)
自分がどの水準に該当するか確認し、上限を超えている場合は病院側に改善を求める法的根拠になります。
宿日直許可の仕組みを理解する
「宿日直許可」を取得している病院では、当直が労働時間にカウントされません。つまり、実態として忙しい当直でも、制度上は「待機」扱いになっている可能性があります。自分の病院の宿日直許可の取得状況を確認することは、交渉の第一歩になります。
よくある質問(Q&A)
Q. 「当直を減らしたい」と言うのは印象が悪い?
2024年の働き方改革以降、当直回数の見直しは社会的にも求められている流れです。正当な理由と代替案をセットで提示すれば、ネガティブな印象にはなりません。むしろ、自分の健康管理ができる先生として評価されるケースもあります。
Q. 当直なしで専門医は維持できる?
専門医の更新要件は学会ごとに異なりますが、当直の有無が直接的な要件になっているケースは多くありません。外来やカンファレンス参加、論文発表などで要件を満たすことは可能です。
Q. 当直の多い病院から転職する際の退職理由は?
面接では「ワークライフバランスの改善」「持続可能な働き方を実現したい」など、前向きな表現で伝えましょう。「自分の専門性をより活かせる環境で長く貢献したい」という形にすると好印象です。
Q. 当直手当なしで生活できるか不安です
当直手当への依存度は先生によって異なりますが、基本給が高い病院に転職する、日勤帯の非常勤バイトで補う、といった方法で十分にカバーできます。まずは自分の年収の内訳を確認し、当直手当がどの程度の割合を占めているかを把握するところから始めましょう。

まとめ
当直を減らしたいと感じている先生は、まず現在の職場での交渉から始めてみてください。Give & Takeの提案や働き方改革の制度を活用すれば、今の環境でも改善の余地はあります。それでも状況が変わらない場合は、転職という選択肢を真剣に検討しましょう。当直なし・当直回数が少ない求人は確実に増えています。年収を維持しながら当直を減らすことも、戦略次第で十分に可能です。医師としてのキャリアを長く続けるために、今こそ行動を起こしてください。
外部参考リンク:医師の働き方改革(厚生労働省)
外部参考リンク:医師の「当直」完全攻略ガイド(MRT)
外部参考リンク:医師当直の実態と働き方改革の行方(医療DXナビ)
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