医師の求人票を見ていると、「年俸制」と「月給制」の2つの給与体系があることに気づきます。「どっちが得なの?」「年俸制だと残業代は出ないの?」と疑問に思う先生も多いはず。ここでは、年俸制と月給制の違いを具体的に比較し、転職時にどちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
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年俸制とは
年俸制は、1年間に支払われる給与の総額をあらかじめ決定し、それを12分割(または14分割・16分割など)して毎月支払う制度です。医師の求人では年俸制を採用している医療機関が多く、「年俸2,000万円」「年俸1,800万円」といった形で提示されます。
年間の収入額が事前に確定しているため、ライフプランが立てやすいのが特徴です。ただし、年俸に賞与が含まれているかどうかは医療機関ごとに異なるので、必ず確認が必要です。
月給制とは
月給制は、毎月の基本給に各種手当を加算して支給する制度です。勤続年数や役職に応じて基本給が昇給するのが一般的で、賞与(ボーナス)は別途支給されます。公立病院や大規模な医療法人では月給制を採用しているケースが多いです。
一目でわかる違い
年俸制と月給制の主な違いを整理すると、以下のようになります。
- 給与の決め方:年俸制は年間総額を先に決定、月給制は月額を基準に決定
- 収入の変動:年俸制は原則1年間固定、月給制は手当やボーナスで変動あり
- 賞与の扱い:年俸制は含まれていることが多い、月給制は別途支給
- 昇給のタイミング:年俸制は年度ごとの見直し、月給制は定期昇給あり

年俸制のメリット・デメリット
メリット
年間収入が明確で安定しているのが最大のメリットです。住宅ローンの審査や資産運用の計画を立てる際にも、年間の手取り額を正確に把握できるため、ライフプランを組みやすいという利点があります。
また、成果や実績を評価されることで大幅な昇給の可能性もあります。特に民間病院やクリニックでは、外来患者数の増加や手術件数の実績が評価されて、翌年の年俸がアップするケースがあります。
デメリット
年俸が下がるリスクがある点は見落とせません。病院の業績悪化や自身のパフォーマンスによっては、翌年の年俸が減額されることがあるのです。月給制のように安定した昇給が保証されないため、成果が伴わなければ収入が下がる可能性があります。
また、年俸に当直手当や残業代が「みなし」で含まれているケースがあり、これが問題になることもあります。後ほど詳しく解説しますが、年俸制だからといって残業代が不要になるわけではありません。
月給制のメリット・デメリット
メリット
月給制の最大のメリットは、安定した収入に加えて、別途ボーナスが支給される点です。医師のボーナスは基本給の3〜6ヶ月分とされる施設が多く、夏と冬にまとまった収入を得られます。これは年俸制では得られない魅力です。
また、勤続年数に応じた定期昇給があるため、長く勤めるほど基本給が上がるという安定感があります。公立病院や大規模な医療法人では、医師の給与体系が明確に規定されており、透明性が高いです。
デメリット
月給制では、実力や成果に関係なく給与が決まる傾向があります。年功序列的な給与体系のもとでは、若くて能力の高い医師が十分な報酬を得られないことがあります。また、病院の業績が悪化するとボーナスが減額されるリスクもあり、年間の総収入が変動しやすいというデメリットもあります。
- 年俸制は収入の予測がしやすいが、翌年の減額リスクあり
- 月給制はボーナスが別途支給されるが、業績次第で変動あり
- 実力主義を好む医師は年俸制、安定志向の医師は月給制が合いやすい
年俸制で注意すべき残業代の問題
年俸制でも残業代は発生する
非常に重要なポイントとして、年俸制であっても法定労働時間を超えた勤務には残業代が発生するということがあります。年俸制は「年間の報酬額を最初に決める」給与制度であり、残業代を免除する制度ではありません。
ところが、医療機関の中には「年俸制だから残業代は出ない」と誤解しているところが残念ながら存在します。これは法的に問題があり、未払い残業代を後から請求されるケースも出ています。
固定残業代(みなし残業代)に注意
年俸に「月○時間分の時間外手当を含む」と記載されているケースがあります。これが固定残業代(定額残業代)です。固定残業代は法律上認められていますが、以下の条件を満たす必要があります。
- 固定残業代に相当する時間数と金額が明確に区分されていること
- 固定残業時間を超えた分は追加で残業代を支払うこと
- 雇用契約書に明記されていること
これらの条件を満たさない固定残業代は無効とされる判例もあるため、雇用契約書の記載内容を細かく確認することが重要です。

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医師転職ドットコムの公式サイトはこちら税金・社会保険の違いはあるのか
所得税・住民税は変わらない
年俸制でも月給制でも、所得税や住民税の計算方法は同じです。年間の総収入に対して税率が適用されるため、年俸制だから税金が高い(または安い)ということはありません。ただし、年俸の支払い方法(12分割か16分割かなど)によって月々の源泉徴収額が変わるため、手取り額の感覚が異なることはあります。
社会保険料にも大きな差はない
社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算されます。年俸制の場合、年俸を12で割った金額が標準報酬月額の基準になります。月給制では基本給+手当の月額が基準になるため、結果的にほぼ同じ計算になります。
転職時にどちらを選ぶべきか
年俸制が向いている医師
- 自分の実力に自信があり、成果に応じた報酬を求める医師
- 年間の収入を事前に確定させたい医師
- 住宅ローンなど大きな支出を計画している医師
- 民間病院やクリニックへの転職を考えている医師
月給制が向いている医師
- 安定した昇給とボーナスを重視する医師
- 長期間同じ職場に勤める予定の医師
- 公立病院や大規模医療法人への転職を考えている医師
- 残業代や各種手当をきちんと受け取りたい医師
年俸制の求人を比較する際は、「年俸にボーナスが含まれているか」「固定残業代が含まれているか」「当直手当は別途支給か」の3点を必ず確認しましょう。同じ「年俸2,000万円」でも、内訳によって実質的な待遇は大きく異なります。
雇用契約書で確認すべきチェックリスト
転職先の給与体系を正しく理解するために、雇用契約書の以下の項目を必ず確認しましょう。
- 基本年俸(月給)の金額とその内訳
- 賞与の有無と支給基準
- 固定残業代が含まれている場合のみなし時間数と金額
- 当直手当・オンコール手当の支給有無と金額
- 昇給の有無と時期・基準
- 退職金制度の有無
- 試用期間中の給与条件

よくある質問(Q&A)
Q. 年俸制で途中退職した場合、年俸は日割り計算されますか?
はい、一般的には日割り計算されます。例えば年俸2,400万円(月額200万円)で10月末に退職した場合、4月から10月までの7ヶ月分として1,400万円が支払われるイメージです。ただし、契約内容によっては日割り計算のルールが異なることがあるため、雇用契約書の退職時の給与精算方法を事前に確認しておきましょう。賞与が年俸に含まれている場合は、在籍期間に応じた按分計算が行われるのが一般的です。
Q. 年俸制から月給制の職場に転職する場合、何に注意すべきですか?
最も注意すべきは「総支給額」の比較です。年俸制では「年俸2,000万円」と年間の総額が示されますが、月給制では「月給80万円+ボーナス年3回」のように分けて提示されます。年間の手取り総額で比較することが重要です。また、年俸制で固定残業代が含まれていた場合、月給制では残業代が別途支給されるため、実際に残業が多い職場では月給制の方が年収が高くなるケースもあります。
Q. 年俸の交渉はどのタイミングで行うべきですか?
年俸制の交渉は、主に以下の2つのタイミングで行います。
- 入職時の条件交渉:内定後〜雇用契約書の締結前が交渉の最適なタイミングです。一度契約を結ぶと変更が難しくなるため、この段階で希望額を伝えましょう
- 年度ごとの更新時:年俸制では通常、年に1回の見直しがあります。前年の実績を示して昇給を交渉するチャンスです
エージェントを利用している場合は、エージェントが年俸交渉を代行してくれるため、直接交渉が苦手な先生でも適正な年俸を引き出しやすくなります。
Q. 年俸制の場合、退職金はどうなりますか?
年俸制であっても退職金制度がある医療機関では退職金が支給されます。ただし、「年俸に退職金相当額が含まれている」という契約の場合は、別途の退職金は支給されません。年俸の内訳として退職金積立分が明記されていないか、雇用契約書で確認しましょう。退職金が年俸に含まれるかどうかで、長期的な収入には大きな差が出ます。
Q. 年俸制で収入が下がった場合、翌年から月給制に変更できますか?
給与体系の変更は医療機関側の制度によります。年俸制から月給制への変更が可能な職場もありますが、給与体系は医療機関の就業規則で定められているため、個人の希望だけで変更できないことが多いです。給与体系に不安がある場合は、転職先を選ぶ段階で自分に合った制度の職場を選ぶのが得策です。
まとめ
年俸制と月給制には、それぞれメリット・デメリットがあります。年俸制は収入の予測がしやすく成果主義に向いている一方、月給制は安定した昇給とボーナスが魅力です。どちらが良いかは一概には言えず、自分の価値観やライフプランに合わせて選ぶことが大切です。特に年俸制では残業代の扱いや固定残業代の内訳に注意が必要ですので、雇用契約書の確認は念入りに行いましょう。
参考:ドクタービジョン「年俸制の仕組み」 / グローウィル国際法律事務所「医師の年俸制と定額残業代」 / 病院経営事例集「年俸制の医師における雇用契約の注意点」
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